いまさら聞けないシリーズその9 クリッピングとは?

2017年5月23日

mackie_blog_clipping
クリッピングを理解するには電子機器内における音声信号の流れを理解する必要があります。音声はマイクロホンや楽器のピックアップなどを介して電子信号に変換された後、AC電圧が音声信号になります。この音声信号の音量を上げるためにはAC信号の電圧を高くする必要があります。オペレーションアンプはゲインをかせぐための回路を装備していますが、信号の振幅には限界があります。この限界値は下記の図で緑の点線で表記しております。下記2つの図には異なる正弦波を表示しています。上の図の正弦波は限界値の中に納まっていますが、下の図の正弦波はこの限界値(緑の点線)を超えています。下の図のフラットに表示してある青い線が信号が「クリッピング」していることを表しています。
Clipped Waves-01
PAなどのライブサウンドエンジニアはこのクリッピングを避けるために音響システムを調整しています。なぜならこのクリッピングはスピーカーを損傷させてしまう可能性があるからです。音声信号がクリッピングポイントに達するとクリッピングされた信号は電圧の限界値を超えるDC信号になるため、スピーカーのコーンを振動させる信号ではなくなります。このことによりパワーアンプからの電力が音声信号を生成するもではなくなり、代わりにスピーカーのボイスコイルを加熱するための信号になってしまうのです。言い換えるのであれば上記図の下の図で青色の線で表示してある信号が限界値を超えフラットになっている間はパワーアンプからの信号は熱にしか変換されないのです。

クリッピングを起こしてしまうと・・・

  • クリップされた信号はスピーカーを損傷してしまう原因になります。ミキサー、アンプ、その他の音響機器、どこでクリップするかどうかは関係ありません。いずれかの音響機器でクリップした信号が発生しているとパワーアンプの出力が低くともスピーカーを破損してしまう可能性があります。
  • 一般的なパワードPAスピーカーには保護回路を搭載しており、クリッピングを検出できません。クリッピングによるスピーカーの破損は事前に防ぐことができません。
  • パワーアンプの出力が小さすぎるとスピーカーユニットを破損させることがあります。パワーアンプは最大出力を超える場合、出力信号はクリップします。小さいアンプで大きなスピーカーを鳴らすことはクリップさせやすくし、スピーカー破損の危険性を高める原因になります。
  • ラウドスピーカのパワーハンドリングスペックは、通常のクリップされていない音声信号に基づいて計算されています。

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